工学研究院 生命機能科学部門
顔写真
教授
大野   弘幸
Ohno   Hiroyuki


1953年生まれ
工学博士
共同・受託研究希望テーマ
共同・受託研究実績
著書
論文
研究業績(その他の活動)
知的財産権・特許
所属学会
研究発表、招待講演等
Tel. 042-388-7024
Fax. 042-388-7024
メールアドレス
http://www.cc.tuat.ac.jp/~ohno
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本学・兼務所属

工学部 生命工学科
工学府 生命工学専攻
グローバルイノベーション研究院 


教育と研究

プロトンからプロテインまでを高分子の中に溶かし、新機能を引き出す!

タンパク質などの生体物質は、水に溶けて初めて重要な機能を発揮します。これらを水から取り出し、高分子(プラスチックス)に閉じ込めるとどうなるでしょうか?普通は「生き埋め」となり、活性を失ってしまいますが、少し工夫すると高分子フィルムの中でも元気に活動させることができるようになります。そのポイントは、生体物質がまるで水の中にいるように感じさせれば良いのです。ポリエチレンオキシド(PEO)と呼ぶ高分子は、繰り返し単位が水と似ているので、水と同じ様に大量の塩を溶解することができます。図1は、水と似た極性環境がPEO中でも形成されることを模式的に示したものです。PEOは柔らかい高分子なので、イオンはこの中をスイスイと移動できます。これはまるで食塩水をフィルムにしたような材料として考えられます。こうした溶解能力の高い高分子を私たちは“高分子溶媒”と呼んでいます。低分子の溶媒とはいろいろ性質が異なっており、とても面白い材料です。これを応用すると電池が薄いフィルムになります。電気自動車やウオッチホンも夢ではありません。さて、PEOは無機塩だけでなく、いろいろな有機分子や高分子までも溶かします。溶かした後で、電極を入れて電気を流すと酸化還元反応を行わせることができます。上で紹介した電池はその一例なのです。酸化還元反応に伴って色が変わる材料を組み合わせれば、発消色素子になります。希土類イオンを使うと、1ボルト程度の電圧を切り換えるだけで青くなったり赤くなったりする蛍光発光フィルムを作ることもできます。PEOには金属錯体や補酵素、さらにはDNAやタンパク質までも溶かすことができます。動物等の血液中や筋肉中には酸素を運ぶヘモグロビンやミオグロビンといったタンパク質があります。これらはヘムタンパク質と呼ばれているもので、中心にはポルフィリンという有機分子と結合した鉄イオンがあります。私たちはこのヘムタンパク質の酸化還元反応も“高分子溶媒”中で行わせることに成功しました。ただし、タンパク質を溶解させるためには、PEOを表面に結合させる(強制的溶媒和)ことが必要です。図2に示すように、水中では、安定なタンパク質でもPEO中では変性してしまいます。ところが、PEOという皮をかぶると水中でもPEO中でも安定になります。タンパク質は水中でのみ機能すると思っている人は時代遅れですよ!さらに、PEO中では、120℃でも変性せずに酸化還元できます。タンパク質は50℃以上ではダメになってしまうと思っていた人も時代遅れです!このように水中では考えられないような強さをタンパク質から引き出すことができるようになってきたので、将来はタンパク質を電極の上に並べて、素子を作ってみようと考えています。また、電子伝達タンパク質という、その名の通り、生体内でタンパク質間の電子のやりとりを仲介するタンパク質は、もともとその働きのために酸化還元反応をするのにとても優れていて、これらが強くて丈夫になればとてもよい素子になると考えています。この電子伝達タンパク質には先ほどの鉄ポルフィリン分子を持つヘムタンパク質(チトクロムc等)もありますし、銅イオンがその中心にある、きれいな青色をしたブルー銅タンパク質と呼ばれているものもあります。これらのタンパク質をうまく利用してやれば生体分子を部品とする固体状態の素子が出来るようになるかもしれません。また、もう一つの代表的な生体高分子であるDNAは、遺伝情報を記録している有機化合物です。ほとんどのDNAはふつう美しい二重らせん構造をしていて、その中には導電性があると報告されたものもあります。私たちは、二重らせんDNAにインターカレーターと呼ばれる別の分子を挟み込み、DNA中を電子が移動しやすいように加工して、DNAを極細のワイヤーに仕立てました。さらに機能を改善して導電性を高める工夫をいろいろ試しています。また、DNAを使って、イオン伝導性フィルムも作っています。本来DNAが持つ遺伝情報の利用とは別に、機能材料として利用しようと考えています。また、新しいイオン伝導性高分子の開発のためイオン液体も研究しています。数百種を越えるイオン液体を合成し、物性と構造の相関を整理すると共に、新規なイオン液体を提案し、実際に合成して物性を評価しています。このイオン液体を溶媒として、タンパク質など様々な物質を溶解させたり、イオン輸送場としたりするための基礎研究をしています。勿論イオン液体の高分子化も精力的に進めています。イオン液体に酵素を溶かし、エネルギー変換させる”非水系バイオ燃料電池”は究極の研究目的のひとつです。

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キーワード

高分子溶媒,バイオ素子,イオン伝導体,イオン液体


出身大学院等・出身学校

1981年 早稲田大学理工学研究科  博士後期課程修了
1978年 早稲田大学理工学研究科  博士前期課程修了
1976年 早稲田大学理工学部応用化学科  卒業


研究分野

機能材料・デバイス
環境関連化学
イオン伝導性高分子


研究分野・キーワード

導電性高分子、イオン伝導、電気化学、ポリエーテル、イオン液体、酸化還元反応、電子移動、タンパク質、DNA、導波路分光


研究テーマ

バイオマスを溶解するイオン液体 (KEYWORD:デザイン、合成、評価、極性、セルロース、リグニン)  概要:様々なバイオマスを処理し、有用成分であるセルロースやリグニンを抽出できるイオン液体を合成し、能力を評価する。
 
水との親和性をわずかな温度変化で制御できるイオン液体の設計 (KEYWORD:下限溶解臨界温度、イオンの水和、相転移)  概要:水との親和性をわずかな温度変化で制御できるイオン液体の設計を行う。具体的には水と混合して相分離するイオン液体がわずかな温度変化で水と相溶するようになるようなイオンの設計を行う。
 
イオン液体の科学的な利用 (KEYWORD:イオン液体 不揮発性液体 溶解 機能賦与)  概要:イオン液体を単なる溶媒としてではなく、特定イオンの伝導体や生物化学的な反応場として利用する
 
イオン伝導性高分子の合成と物性評価 1988- (KEYWORD:イオン、伝導度、)  
 
エバネッセント波を利用した光不透過界面の物質の分光分析 2000/04-2010/03 (KEYWORD:エバネッセント波 界面 分光学)  概要:光導波路を用い、界面から発生するエバネッセント波を利用して、光不透過な界面上の分子の可視スペクトルを測定する。偏光を利用して分子の存在状態(立っているか、ねているか、単量体として独立しているか、集合してアグリゲートを形成しているか)を解析することもできる。
 


受賞学術賞

高分子科学功績賞 (2014/05)
Paul Walden Award (2008/11)



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